トロッコ嵐山駅の南側には竹林に囲まれた小道が続き、そこを嵯峨駅に戻るように行くと「源氏物語」ゆかりの野宮神社がある。
ここはかつて、皇女が身を清めるための場所の一つで、「源氏物語・賢木の巻」には野宮に籠った六条御息所を、光源氏が訪ねていく場面が描かれている。
現在は、神社に祀られた野宮大黒天が縁結びの神様として、若い女性に人気を得ている。

トロッコ嵐山駅の北側の小倉山の中腹には、紅葉で知られる常寂光寺がたたずむ。
本堂、妙見堂、多宝塔などがあり、特に紅葉に包まれた石段を登りつめた先に姿を現す多宝塔は秀麗そのものだ。

トロッコ嵐山駅を出た列車はトンネルに入り、そこを抜けると辺りは一変。
保津川が寄り添い始める。
川面を伝わる心地よい風に髪をなびかせ、眼下には岩をはむ清流が間近に迫る。
列車が保津川にかかる鉄橋の上に差しかかると、ここで一旦停止。
四季折々の自然の変化を見せる保津峡をゆっくりご覧くださいという心憎い演出だ。